館長メッセージ

館長メッセージ

徳川美術館は、尾張徳川家2代当主の徳川光友の隠居所であった大曽根別邸の跡地に昭和10年に開館した、日本の私立美術館の中では4番目に歴史のある美術館です。 また、旧大名家のコレクションをもとに旧大名家自らが設立した日本で最初の美術館であり、愛知県の登録博物館第1号でもあります。 創設者は私の曽祖父にあたる尾張徳川家19代当主徳川義親で、大正から昭和初期にかけて関東大震災や戦争などの影響で不安定な社会情勢が続く中、大名文化を後世に伝える文化財の散逸を防ぐために私財を寄附して財団を作り、徳川美術館を設立しました。

徳川美術館のコレクションは、徳川家康の没後に尾張徳川家に形見分けされた家康の遺愛品を中心に、歴代当主の遺愛品なども遺されており、御三家筆頭という家格とあいまって、質・量ともに全国屈指の大名道具コレクションとなっています。 また、単に鑑賞目的の美術品として蒐集されたものではなく、大名家の生活の中で実際に使われた道具として伝わったことを物語る文献資料が遺されていることも、徳川美術館のコレクションの大きな特長となっています。

個々の作品を展示ケースに並べて鑑賞していただくだけでは、そこから得られる知識・経験は限られたものになってしまいます。 徳川美術館では、第二展示室に名古屋城二之丸御殿にあった茶室を、第三展示室に同じく二之丸御殿にあった広間を、そして第四展示室には二之丸御殿にあった能舞台を復元し、大名道具が実際に使われた空間の中に作品を置いてご鑑賞いただく体系展示の手法を全国の美術館の中でもいち早く採り入れ、茶道具の取り合わせの美や書院飾りの様式美、そして能舞台に映える能装束の華やかさなどをご鑑賞いただけるようになっています。

戦前の帝冠様式建築の代表的な例として有形文化財に登録されている本館では、大名文化を様々な観点からご紹介する企画展示を行っています。 同じ作品でも、視点を変えれば違った側面が見えてくる面白さをお楽しみいただければと思います。 また、毎年2月初旬から4月初旬にかけては、恒例となった雛道具が展示され、名古屋の春の風物詩となっています。

ときどき、「源氏物語絵巻を見に行ったのですが展示されていなくて残念でした」というお話を耳にすることがあります。 わざわざ徳川美術館まで足をお運びいただいたのにご覧いただけなかったことは大変心苦しく思いますが、国宝源氏物語絵巻をはじめとする一部の作品は脆弱なため、作品保護の観点から展示期間が制限されております。 また、展示期間に制限がない作品においても、限られた展示スペースの中でより多くの作品をご紹介させていただくためには、定期的に展示替えを行う必要があります。 美術品をご鑑賞いただいてこその美術館ではありますが、その一方で貴重な文化財を後世に遺す使命もあり、いつでもご希望の作品をご鑑賞いただけるものではないことをご了承いただければ幸いに存じます。

またときには、「源氏物語絵巻は見られなかったけど、素晴らしい作品が数多く展示されていて感激しました」というようなご感想をいただくこともあります。 約260年にわたって泰平の世が続いた江戸時代には、様々な芸能や工芸が育まれました。 泰平の世だからこそ育むことができた日本独特の文化や美意識を、徳川美術館のコレクションを通じで感じていただけたとしたら、これに勝る喜びはありません。

2020年に開催が予定されている東京オリンピックに向けて、観光立国という言葉をよく耳にするようになりました。 徳川美術館としても、大名文化を海外の方々にご紹介する役割をしっかりと担っていきたいと思います。 また、海外の方々ばかりでなく、若い世代の方々をはじめとして、より多くの方々に徳川美術館に足を運んでいただけるように、様々な側面から情報発信を行うとともに、新たな試みの企画にも積極的に取り組んでいく所存です。