特別展・企画展

企画展示 新年を祝う

日本では古来、正月を一年の大きな区切りとして新年を祝う行事を行い、一年の幸せを願う風習があります。
江戸時代の大名家では、元旦の早朝にはじまる「初登城」、そして三日の「謡初め」、七日の「若菜の祝儀」、十一日の「御具足祝い」など、さまざまな行事が厳かに行われました。
尾張徳川家伝来品を中心に、一年の始まりを飾る大名家の正月行事の数々を紹介するとともに、福を呼び込む縁起物や玩具、干支の「午」をあらわした絵画や工芸品などを展示します。

主な展示品

この展覧会の見どころ

日本では、古来、正月を一年の大きな区切りとして、新年を祝う行事を行い、一年の幸せを願う風習があります。正月の行事は広く捉えれば、12月の新年を迎える準備から始まります。江戸時代には、12月13日に「御事納(おんことおさめ)・御煤払(おんすすはらい)」と称して大掃除が行われ、この日を境に正月準備が始められました。年神(としがみ)を迎えるために、家の中を清め、また年間の厄を払います。そして神の依代(よりしろ)となる門松や注連縄(しめなわ)などを飾り、鏡餅を供えます。門松や注連縄には、松や竹、裏白(うらじろ)などが使われますが、とりわけ、松は冬でも緑を失わない常盤木(ときわぎ)として不老長寿、生命力や繁栄の象徴とされました。松を正月に飾る風習は、一年で最初の子(ね)の日に、野に出て小松を引き抜いて長寿を願う平安時代の「小松引き」の伝統を受け継いでいるといわれています。

江戸時代の大名家でも、新年を祝う正月行事や儀礼がさまざまに執り行われました。大名家の正月は、元日の初登城に始まります。封建社会では、年始は主従関係の結びつきを確認するため、主君に拝賀の礼を行う慣わしがありました。初登城は三ケ日にわたって行われますが、登城の日は家格や身分によって異なり、元日は尾張徳川家をはじめ御三家・御家門および譜代の大名が登城しました。早朝7時頃、諸大名は江戸城へ登城し、拝礼と太刀目録を献上した後、吸物と「御流(おながれ)」と呼ばれる酒盃を頂戴します。そして、将軍から時服(じふく)(綿入れの小袖)を拝領しました。

3日の夕方には、「謡初め」があり、一年で最初の能が行われます。江戸にいる諸大名は、江戸城に登城し、天下泰平・五穀豊穣・国土安穏を言祝ぐ「翁」をはじめ、「高砂」や「老松」などおめでたい内容の能を観覧しました。

7日は、五節供の一つである若菜の節供にあたります。七草の日とも呼ばれ、七草粥を食します。この日に七種類の新鮮な若菜を食べると、一年間健康で過ごせるといわれます。大名家では、三ケ日と同じように登城し、将軍に拝謁する決まりでした。

11日には、城内に鎧兜や武器を飾り、その前に餅を供えて一年の武運を祈る「御具足(おぐそく)の祝い」が行われます。武家ならではの正月行事です。尾張徳川家初代義直(よしなお)は、毎年このために具足を新調したと伝えられています。

こうした「表」の諸行事に対し、藩主の正室や子女などの生活空間である「奥」でも、正月の諸行事が行われました。元日には、正室は女中たちの新年の挨拶を受け、女中たちには「御流」の酒杯が下されます。また2日に勅撰和歌集の「三代集」や「八代集」などの古典文学や吉書(きっしょ)とされた「文正草紙(ぶんしょうぞうし)」を読む「御読始(おんよみはじめ)」、4日には楽器の「御弾始(おんひきはじめ)」などがありました。

このほか、大名家では今の「御歳暮」や「御年賀」と同様、日ごろの感謝をこめ、歳末や新年に、書状とともに将軍をはじめ親戚筋に冬の小袖や特産品などの贈答品を贈る風習がありました。

本展覧会では、尾張徳川家伝来品を中心に、一年の始まりを飾る大名家の正月行事の数々を紹介するとともに、福を呼び込む縁起物や玩具、干支えとの「午(うま)」をあらわした絵画や工芸品などを展示します。

【学芸課長 吉川美穂】

概要

会期
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日(但し、1月13日(月)は開館、翌14日(火)は休館)
観覧料

一般 1,200円・高大生 700円・小中生 500円
※20名様以上の団体は一般200円、その他100円割引
※毎週土曜日は小・中・高生入館無料

主催 徳川美術館・日本経済新聞社
協力 名古屋市交通局
関連企画

ギャラリー・トーク(担当学芸員が展示解説します。)
1月10日(金)・24日(金)
11:30~・14:30~ 各約30分

資料 企画展チラシ(PDF:6.3 MB)[更新日: 新しいウインドウで PDF を開きます
展示作品リスト(PDF:175.8 KB)[更新日: 新しいウインドウで PDF を開きます