特別公開

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国宝 源氏物語絵巻 〈関屋・絵合・東屋一〉

国宝「源氏物語絵巻」は、紫式部が著した『源氏物語』を抒情的な画面の中に描き出した、日本を代表する絵巻です。
『源氏物語』の絵画化は、その成立当初間もない頃からおこなわれていたとみられているものの伝わっておらず、本絵巻は現存する作例としてはもっとも古く、12世紀前半に白河院(しらかわいん)・鳥羽院(とばいん)を中心とした宮廷サロンで製作されたと考えられています。
今年の公開場面は、「関屋」「絵合」「東屋 一」です。企画展「やまと絵うるわし」とともにお楽しみください。

見どころ

国宝「源氏物語絵巻」は、紫式部が著した『源氏物語』を抒情的な画面の中に描き出した、日本を代表する絵巻です。『源氏物語』の絵画化は、その成立当初間もない頃からおこなわれていたとみられているものの伝わっておらず、本絵巻は現存する作例としてはもっとも古く、12世紀前半に白河院(しらかわいん)・鳥羽院(とばいん)を中心とした宮廷サロンで製作されたと考えられています。

当初は『源氏物語』全帖を一具として絵画化が試みられていたとみなされていますが、現在、尾張徳川家伝来の蓬生(よもぎう)、関屋(せきや)、柏木(かしわぎ)一~三、横笛(よこぶえ)、竹河(たけかわ)一・二、橋姫(はしひめ)、早蕨(さわらび)、宿木(やどりぎ)一~三、東屋(あずまや)一・二の9帖15段分の詞書と絵、および絵が失われ詞書のみが残る絵合(えあわせ)の1段が名古屋・徳川美術館に、阿波・蜂須賀家に伝来した鈴虫(すずむし)一・二、夕霧(ゆうぎり)、御法(みのり)の3帖4段分の詞書と絵が東京・五島美術館に所蔵されています。これらを合わせた13帖分と、諸家に分蔵される若紫(わかむらさき)・末摘花(すえつむはな)・松風(まつかぜ)・薄雲(うすぐも)・少女(おとめ)・蛍(ほたる)・常夏(とこなつ)・柏木(かしわぎ)の詞書の数行の断簡、および後世の補筆が著しい若紫(わかむらさき)の絵の断簡(東京国立博物館蔵)を含めた20帖分が、900年近い星霜を経て現在に伝えられています。

絵は、墨描きの下図を描き、構図に微妙な修正を加えながら彩色を施し、さらに顔の輪郭や目鼻、あるいは衣や調度の文様を描き起こす「作り絵」で、一線のように引かれた目、「く」の字状の鼻、ぽつんと点じられた小さな口で面貌を表現する「引目鉤鼻(ひきめかぎはな)」や、屋根を取り去って屋内の情景が覗き込めるように描く「吹抜屋台(ふきぬきやたい)」などの描法により、『源氏物語』の世界を余すところなく伝えてくれます。詞書・絵ともに現存する19段のうち11段は、詞書中に和歌を含み、さらにこのうち6段は登場人物間にかわされた贈答歌を中心に場面が選ばれているので、物語の行間に込められた抒情性や登場人物の心の綾までもが巧みに描き出されています。

詞書は、11世紀以来の伝統を引き継ぐ美しい連綿体(れんめんたい)で書きつづられた流麗な書風や、自由奔放で肥痩にとみ、側筆の重厚で力強い藤原忠通(ただみち)(1097~1164)にはじまる法性寺流(ほっしょうじりゅう)の書風など、当時の新旧の書の様式が混在しています。また詞書に使用された料紙には美麗な装飾が凝らされており、絵・書と一体となって王朝人たちの美意識を伝えてくれます。

国宝「源氏物語絵巻」は、作品保存の観点から展示期間が厳しく制限されており、毎年1回、2~3場面ずつ公開し、5年ごとに五島美術館(東京)と徳川美術館で全点公開を行います。次回の徳川美術館での全帖公開は2025年の予定です。

概要

公開期間
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日
観覧料

一般 1,200円・高大生 700円・小中生 500円
※20名様以上の団体は一般200円、その他100円割引
※毎週土曜日は小・中・高生入館無料

主催 徳川美術館