葉月物語絵巻<br /><small>第五段・絵</small>

重要文化財

葉月物語絵巻
第五段・絵
はつきものがたりえまき

平安貴族の男女の恋愛を主題とした逸名物語の残巻で、現在の名称は詞書の冒頭に「八月(はづき)十よひしもつかたなる所に...」の語句にちなんで、便宜的に名付けられました。物語は、現存部分から二組の男女の複雑な恋愛物語とする見解が示されています。絵は、各段にわたり補筆が認められますが、古様を示す筆致、装束・文様などの有職(ゆうそく)からみて、12世紀半ば頃の製作とみなされます。詞書は、後二条天皇(1285~1308)筆と伝えるものの確証はなく、書風や料紙の装飾から見て14世紀初期頃に詞書のみが何らかの理由で書き改められたと考えられます。第五段では、高欄(こうらん)の一角、御簾(みす)を巻き上げて端近に衵襲(あこめがさね)姿の帝、簀子(すのこ)には笛を吹く大将と琵琶を弾く宮が対坐し、階(きざはし)に箏(そう)を弾く人物の後ろ姿が描かれます。前栽(せんざい)には秋草が咲き乱れ、画面の上部に墨の霞を引いて夕景をあらわしています。

【平安時代 12世紀】

紙本著色
縦23.4cm 横27.9cm

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