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春季特別展 将軍からのおくりもの-儀礼と拝領-

尾張徳川家は、江戸時代を通じて時の将軍からのおくりものを幾度も受け取ってきました。
なかでも拝領品とよばれた品々は、当主の元服・婚礼・後継ぎの誕生や名古屋への初入国などの儀礼の際に、祝いの品として届けられた品物です。
これらは、徳川将軍家との深い関係を示すあかしとして、尾張徳川家では大事に伝えられました。
おくりものに込められた徳川将軍家から尾張徳川家への想いを、当館の所蔵品から探っていきます。

主な展示品

Chapter Explanations

現在「おくりもの」というと、冠婚葬祭や進学祝い・就職祝いなどの際に取り交わす金銭や物品などが思い起こされます。これらは近代以降始まったのではなく、長い歴史のなかで生まれ、形を変えつつも現在まで受け継がれてきました。

江戸時代に御三家筆頭・約六十二万石という家格や石高を誇った尾張徳川家では、贈答品を取り交わす機会が多くありました。その中で最も多く贈答品を取り交わした相手は、徳川将軍家でした。徳川将軍家と尾張家とは君臣の間柄であるとともに、本家と分家の間柄に当たります。このことから、両家の慶弔時には贈答品の交換が行われました。

尾張家に生まれた男子、とくに長男は、その誕生時から跡継ぎとして将軍から祝いの品が届けられました。生後七日目の「お七夜」や「お宮参り」(誕生後すぐとは限らず、七年後の例もあります)には、将軍から守り刀が贈られました。また今の成人式にあたる「元服」では、尾張家のような大大名の場合は将軍の前で行われ、将軍の名の一字があたえられました(偏諱[へんき])。将軍の名前の一字を与えられたことで、将軍とのつながりを意識したことでしょう。尾張家二代光友が三代将軍家光から「光」の字を賜った際の一字書出(いちじかきだし)は、尾張家歴代の中で最古の例に当たります。そのほか尾張家当主が、家督相続(かとくそうぞく)の際に将軍から下賜された刀剣を紹介します。

現在の人々と同様に、結婚は人生の中でも最も晴れがましい行事です。尾張家の婚礼のなかでは、国宝「初音の調度」で知られる、三代将軍家光の長女・千代姫と尾張家二代光友との婚礼が有名です。この婚礼の際には、三代将軍家光から光友へ「短刀 銘 吉光 名物 後藤藤四郎(ごとうとうしろう)」(国宝)が下賜されました。

将軍が尾張家の江戸屋敷を訪問する御成(おなり)の行事では、将軍から刀剣や絵画・茶道具などが下賜されました。伝牧谿(もっけい)筆「柳燕(りゅうえん)図」(重要文化財)は元禄11年(1698)に五代将軍綱吉が尾張家の麹町屋敷を訪問した際、二代光友に下賜した品です。このほか幕府の公式行事の際に、尾張家当主が将軍から贈られた茶壺や将軍自筆の書などを紹介します。

尾張家の慶事以外にも、将軍の代替わりに際して行われた贈答も数多くありました。元和2年(1616)4月17日に薨去した徳川家康のもとには、膨大な遺品が残され、九男義直(尾張家初代)ら三人の男子に分与されました。これら家康の遺品は「駿府御分物(すんぷおわけもの)」と呼ばれ、神聖視されました。家康の遺産分与目録『駿府御分物御道具帳』によると、家康着用の「日の丸威胴丸具足」、「漢作茄子茶入 銘 茜屋」や「井戸茶碗 銘 大高麗」など茶道具の名品が挙げられています。また、将軍の遺品として贈られた「漢作肩衝茶入 銘 宗無」(五代将軍綱吉遺品・尾張家四代吉通拝領)なども紹介します。

以上のような将軍家からの拝領品以外に、将軍家への献上品としては、四季折々の産物「時献上(ときけんじょう)」を挙げることが出来ます。長良川の鮎鮨(あゆずし)や知多の海鼠腸(このわた)が有名です。「礼物軌式(れいもつきしき)」(徳川林政史研究所蔵)には、献上の際の包み方や載せるのに用いた台などが描かれており、名産品がどのような装いで献上品となったかがわかり貴重です。

【学芸員 並木昌史】

Overview of the Exhibition

Period
Hours 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
Closed Days 月曜日<5月5日(月・祝)・6日(火・振)は開館、7日(水)は臨時開館>
Admission Tickets

一般 1,200円・高大生 700円・小中生 500円
※20名様以上の団体は一般200円、その他100円割引
※毎週土曜日は小・中・高生入館無料

Organizers 徳川美術館・名古屋市蓬左文庫・中日新聞社
Supporting Organizations 名古屋市交通局
Exhibition Catalogue 「将軍からのおくりもの」(800円(税込))
関連企画

土曜講座「尾張徳川家当主が受け取った拝領品」
日時/4月26日(土)13時30分~15時
会場/徳川美術館 講堂
※空席の場合のみ、一回600円(入館料別)で受講できます。

特別企画「親と子の甲冑教室」
5月5日(月・祝) 徳川美術館 講堂
※入館者見学自由
※5月5日は小中生入館無料

Reference Material Flyer(PDF:1.5 MB)[更新日: 新しいウインドウで PDF を開きます
Handout(PDF:355.1 KB)[更新日: 新しいウインドウで PDF を開きます