このたび、国の文化審議会より、公益財団法人徳川黎明会が所蔵する「菊白露蒔絵婚礼調度」を、重要文化財(美術工芸品)に指定することが文部科学大臣に答申されました。
調度は、加賀前田家4代光高(みつたか)(1616~45)に嫁した、徳川3代将軍家光養女大姫(おおひめ)(清泰院(せいたいいん) 1627~56)の婚礼調度です。寛永10年(1633)までに蒔絵師の幸阿弥(こうあみ)家によって製作されたと考えられています。高度な蒔絵技法を駆使して、和歌にちなんだ意匠で統一された豪華な調度は、その意匠から「菊白露蒔絵調度」と呼ばれ、記録から製作者・所用者・製作年代が判明する点でも稀有な作例といえます。寛永16年に尾張徳川家に嫁いだ徳川3代将軍家光の娘・千代姫の婚礼調度類(国宝「初音の調度」)に先行する作例であり、当時の婚礼文化や漆工を理解するうえで欠くことのできない作品として高く評価されています。
■ 作品の概要
●名 称:菊白露蒔絵婚礼調度 文台(ぶんだい)1基/香盆1枚/櫛箱1合/小箱4合
●員 数:4件7点
●製作年代:江戸時代 寛永10年(1633)
●法 量:文台 高9.1 縦33.3 横57.9/香盆 高4.2 縦28.5 横40.9/櫛箱 高18.8 縦42.4 横36.4/小箱 各高4.9 縦9.1 横7.8(単位は㎝)
●所 蔵:公益財団法人徳川黎明会 〒171-0031 東京都豊島区目白3-8-11
●保 管:徳川美術館 〒461-0023 名古屋市東区徳川町1017
●意 匠:濃梨子地(こきなしじ)に高蒔絵(たかまきえ)や切金(きりかね)で流水に岩、咲き誇る菊を表し、露に見立てた銀鋲(ぎんびょう)を打つ。「仙人(やまびと)の折る袖匂ふ菊の露打払(うちはら)ふにも千代はへぬべし」の和歌に基づく意匠で、このうち「袖」と「払う」は衣の袖と中啓(ちゅうけい)(扇の一種)で、菊の露は銀鋲で表し、その他の文字を葦手(あしで)文字で散らす。
和歌の典拠と意味:『新古今和歌集』巻第七賀歌 皇太后大夫(こうたいごうのだいぶ)俊成(としなり)の和歌
文治6年(1190)、後鳥羽天皇の女御として藤原兼実(かねざね)の娘任子(たえこ)(宜秋門院(ぎしゅうもんいん))の入内を賀して製作された屛風に書き付ける和歌として、藤原俊成によって詠進された。<仙人が菊の花を手折る袖にこぼれて匂う露を打ち払う一瞬の間にも、この世では千年は経つであろう。>
●伝 来:尾張徳川家伝来
江戸時代の尾張徳川家の台帳に「祖先伝来」と記録される。千代姫と義姉妹の関係によって、大姫の歿後に形見分けとして尾張徳川家にもたらされた可能性が高い。
●記 録:『幸阿弥家(こうあみけ)伝書』(蒔絵師幸阿弥家の事蹟を記す)
第十代長重(ちょうじゅう)伝 慶長四己亥(ちのとい)年出生
(略)
加州松平筑前守菅原少将光高卿室 (かしゅうまつだいらちくぜんのかみ)
大姫君様 御祝言之御道具被為仰付候 (おおひめぎみさま ごしゅうげんのおどうぐおおせつけられそうろう)
清台(泰)院ト号 此御絵様濃梨子地仙人歌之文字金銀彫物 (せいたいいんとごうす このおんえようこきなしじやまひとのうたのもじきんぎんほりもの)
●所 用 者:徳川3代家光の養女大姫(1627~56)。実父は水戸徳川家初代頼房(よりふさ)。寛永4年(1627)生まれ、同8年に家光の養女となり、同9年前田光高と婚約、同10年に婚姻(数え7歳)。5代綱紀(つなのり)と万菊丸を産み、正保2年(1645)夫光高が
死去すると落飾して清泰院と号した。明暦2年(1656)30歳で逝去。小石川・伝通院に葬られた。
■ 今後の公開予定
9月15日(火)~11月13日(金)、当館名品コレクション展示 展示室5において公開します。
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