特別展・企画展

企画展示 年の初めのためしとて

門松を立て、注連縄をかけ、お正月を迎える行事は、日本人の年中行事の中でも最も大切な営みでした。
おせち料理や雑煮をいただくことは今の生活のなかでも脈々と受け継がれていますが、その意味合いは次第に薄れていく傾向にあります。
若水汲み・鏡餅・書き初め・弾き初め・かるた取り・羽根突きなど、お正月にちなむ行事や遊びを通じて、日本人にとってのお正月を考えます。

主な展示品

この展覧会の見どころ

門松を立て、注連縄(しめなわ)をかけ、お正月を迎える行事は、日本人の年中行事の中でも最も大切な営みでした。おせち料理や雑煮をいただくことは今の生活のなかでも脈々と受け継がれていますが、その意味合いは次第に薄れていく傾向にあります。

昨今では、門松も注連縄もなく、ましてや正月の「晴れ着」という言葉さえ死語になりつつある一方で、バレンタインデー・ホワイトデー・ハロウィン・クリスマスなど、海外から移入された行事が商業ベースのもとで日本人の生活の中に浸透し、息づいています。例えばハロウィンでは、子どもたちが近隣の家々を訪れてお菓子をもらう様子がテレビなどで紹介されています。実は日本でもお雛さまの行事の中で、「雛荒らし」「がんどうち」などの名で子どもたちが家々を訪れ、雛の供え物やお菓子をもらって廻る風習があったのですが、戦後、子どもたちに物乞いをするような卑しい行為は差し控えるべきであるという風潮の中で消えていきました。昭和30年代には電化製品の普及により、家事を始めとする生活空間が利便化され、その中で「文化住宅」「文化鍋」「文化包丁」など、「文化」という言葉を冠した造語が多くみうけられるようになりました。文化=便利と言う感覚で文化をとらえ、便利さと引き替えに日本人が長い歴史、生活の中で受け継がれ、培ってきた様々な大切なものを見失う結果となっていきました。文化は一度途切れてしまうと、取り戻すことはなかなか困難になってしまいます。

その昔は12月13日が正月の準備を始める日とされ、「正月始め」「事始め」などと称されました。その日から大晦日までの間に大掃除や餅つき、門松を立て正月を迎える拵えをしました。例えば門松は、正月の神祭りの場であることを示し、あるいは正月に来訪する神様(正月神・歳神(としがみ)・歳徳神(としとくじん))を迎えるための標(しめ)で、この松を憑りましとして歳神が来臨するとも考えられていました。記録によれば門松を飾ることは平安時代後期にはすでにおこなわれていたようです。江戸時代、名古屋城下の門松は、『金城温古録』や『尾張名所図会』などによってうかがい知ることができ、名古屋城・武家・町屋など、正月を迎えるためのさまざまな松飾りがおこなわれていました。

また正月を迎えてからの行事や風習は、宮廷・武家・社寺・民間でさまざまですが、一般的な初詣・雑煮・お屠蘇・鏡餅・お年玉などが先ず思い浮かべられるでしょう。初夢・初釜・初芝居・書き初め・謡初め・かるた取り・羽根突き・双六・凧揚げなどもまた正月ならではの風習や遊びです。このほか、若水汲み・小松引き・七草・万歳・左義長(とんど)など、新春を言祝ぐ習わしがたくさんありました。

本展では「年中行事絵巻」「小朝拝・朔旦冬至図屏風」「千代田の大奥」「絵本大和錦」をはじめとする絵画や浮世絵、版本や工芸作品に取り上げられたお正月にちなむ行事や遊びを通じて、日本人にとってのお正月を考えます。このほか、不老不死の神仙を象徴する松竹梅に鶴亀の意匠や七福神など、めでたさに満ちた、正月にふさわしい作品を取り上げて展示します。

【学芸部長 四辻秀紀】

概要

会期
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日(但し、1月12日(月)は開館、翌13日(火)は休館)
観覧料

一般 1,200円・高大生 700円・小中生 500円
※20名様以上の団体は一般200円、その他100円割引
※毎週土曜日は小・中・高生入館無料

主催 徳川美術館・日本経済新聞社
協力 名古屋市交通局
関連企画

ギャラリー・トーク(担当学芸員が展示解説します。)
1月10日(土)・1月17日(土) 11:30~12:00

資料 企画展チラシ(PDF:1.7 MB)[更新日: 新しいウインドウで PDF を開きます
展示作品リスト(PDF:258.8 KB)[更新日: 新しいウインドウで PDF を開きます